司法書士の仕事の中でも1番花形なのが決済です。
司法書士がなぜ決済に行くのか?その意義と流れ、報酬についても詳しく解説しますので、是非最後までご覧ください。
なお、この記事を書いた私のプロフィールはこちらです。
司法書士はなぜ決済に行くのか
結論として、2つの理由があります。
✅司法書士が決済に行く意義
- 本人確認
- 同時履行のジレンマの解消のため
本人確認
司法書士の本人確認はかなり重い責任を伴います。
なぜなら、決済のような売買が生ずる事は法律的に見ると「物権の変動」があるためです。
物権の変動とは分かりやすく説明すると、誰かの権利が得られたり失われたりすることです。
特に誰かの権利が「失われる」という事はとても大きな利害を生むため、それに関わる司法書士は本人確認をしっかりとしなければなりません。
司法書士の本人確認は面談が原則であり電話やオンラインの方法による事はまだ否定的です。
このように司法書士としての責務としての本人確認をするために決済に行きます。
同時履行のジレンマの解消
同時履行のジレンマとはどういう状態?と思う人もいると思いますので、次の場合を考えてみましょう。
事例
- 佐藤さんがその所有している土地を田中さんに1000万円で売った
- 田中さんは土地を買うためにC中央銀行から1000万円の融資を受け、その担保として購入する土地に抵当権を設定する契約をした
注:売るのと買うのは同日なのにどうやって銀行と契約するの?と思うかもしれませんが、不動産の売買は通常、売りたい人と買いたい人がマッチした段階で売買契約を結びます。そしてその契約の中で、「残代金決済日」を数ヶ月後と決め、その日に向かって売主と買主がさまざまな準備をします。
佐藤さん、田中さん、C中央銀行の三者の関係が出来上がります。
この三者の気持ちと義務をそれぞれ整理してみましょう。
佐藤さん(売主)の気持ちと義務
田中さんがお金を払ってくれれば土地を売ります
→義務:田中さんへの土地の引き渡し
田中さん(買主)の気持ちと義務
C中央銀行がお金を貸してくれて、佐藤さんが土地を引き渡してくれるなら買います
→義務:佐藤さんへの支払い、C中央銀行の抵当権設定登記申請に協力すること
C中央銀行(抵当権者)の気持ちと義務
佐藤さんから田中さんにちゃんと所有権移転登記がされないと抵当権を設定できないので、所有権移転登記がされれば融資したい
→義務:田中さんへの融資
イメージにするとこんな感じです。
このジレンマを解消するにはどうしたらいいでしょうか?
ここで鍵になるのが登記です。
この三者の希望を満たすには、
- 佐藤さんから田中さんへの所有権移転登記
- 田中さんが有することになった土地の所有権に対しての抵当権設定登記
がされれば良いということになります。
そして、この2つの登記は同時にする必要があります。
そうでないとお金の流れと土地の流れが合わなくなってしまいます。
登記は、法定の書類が揃って申請すれば当然に登記が完了します。
つまりは、所有権移転と抵当権設定の登記申請に必要な書類が全て揃っていれば、それは登記が完了しているのと同義語になるということです。
そしてその登記申請に必要な書類が全て揃っているかの確認を司法書士の責任で行い、揃っていると判断できた場合に「融資を実行してください」とGOを出します。
これが司法書士が決済に行く本当の意義です。
なお、司法書士は決済の際に登記原因証明情報を作成しますが、こちらについては解説した記事があるので、気になる方はチェックしてみてください。
決済の流れ
決済当日の流れは以下の通りです。
多少の前後やハウスメーカーが売主の場合に説明が入ったりします。
- 売主と買主の本人確認
- 売買する不動産を当日取得した謄本で売主と買主に確認
- 売主の登記識別情報、印鑑証明書の確認
- 買主の住民票の受領
- 抵当権の設定書類の受領と確認(物権の表示が空白ならこちらで記載していいか金融機関に確認も忘れずに!)
- 書類の署名押印
- 振込み伝票等の記入と確認(事前に終わっている場合もあります)
- 全ての登記に必要な書類が揃っており、署名押印もされているかを確認
- 融資の実行
- 登記識別情報の説明と登記費用の説明
- 売主の着金確認
- 終了
司法書士はこれだけの工程を確認した上で融資の実行のGOサインを出します。
まとめ
今回は司法書士が決済に行く意義とその流れを解説しました。
「先生はちょっときてお金もらえるからいいね」なんて言われたりしますが、全くそんなことはありません!
数時間の決済のために何日も前から準備をし、当日は滞りなく融資が実行されるように陰ながら努力をし、その努力を何ともないような余裕を持って決済に挑んでいます。
司法書士がいることで不動産取引がスムーズに行えます。
司法書士の職責の重大さやその存在意義、努力など普段なかなか分かりにくいと思いますが、これを機にちょっとでも目を向けてもらえれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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