今回は司法書士の独占業務について解説します。
普段の生活で司法書士の仕事を目にする機会は少ないと思いますので、司法書士の独占業務や行政書士、弁護士との違いなどを中心に解説していきます。
なお、この記事を書いた私のプロフィールはこちらです。
今回は、司法書士の独占業務について解説しますが、まだ司法書士についてよく知らない方は先にこちらの記事を読んでから改めて読むとより分かりやすいのでおすすめです。
司法書士の独占業務
司法書士は「登記」と言うイメージがありますが、そもそもどんな資格でどんな独占業務があるのかを解説していきます。
司法書士とは?
司法書士は、法務局・裁判所・検察庁へ提出する書類の作成を代理します。
その中でも特に、法務局への書類の提出、つまりは登記申請の代理が司法書士の業務の花形であり、広く一般に認知されている司法書士像だと思います。
マイホームの購入時や、相続が発生したとき、はたまた会社を設立する時。
そんな節目で会う確率の高い司法書士ですが、実はその業務についてよく知られていないのも事実です。
司法書士には独占業務があり、原則として司法書士でなければ第三者を代理してした登記申請の報酬を得ることができません。
ではその独占業務の根拠となる条文は何かについて次項で確認していきましょう。
司法書士の独占業務に関する根拠条文
司法書士法第3条に業務に関する規定があります。
(1) | 登記又は供託に関する手続について代理すること。 (登記に関する手続とは、不動産の権利に関する登記に関する登記申請手続のほか、会社・法人に関する登記申請手続及び抵当証券法に基づく抵当証券交付申請手続などをいう。) |
(2) | 裁判所、検察庁又は(地方)法務局に提出する書類を作成すること。 (裁判所に提出する書類とは訴状や準備書面を指し、検察庁に提出する書類とは告訴状等を指し、法務局・地方法務局に提出する書類とは、登記申請書のほか、登記原因証書となる売買契約書等をいう。) |
(3) | (地方)法務局長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。 (審査請求とは、不動産の権利に関する登記についての登記官の処分が不当であるとする者が(地方)法務局長に対して行う不服申立てをいう。) |
(4) | 簡裁訴訟代理等関係業務を行うこと。 (簡裁訴訟代理等関係業務とは、簡易裁判所における訴訟手続、支払督促手続、民事保全手続、民事調停手続等であって、簡易裁判所の事物管轄に属する事件について代理することをいう。) |
※ (4)の業務については,簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると法務大臣が認定した司法書士に限り,行うことができる。
詳細な意味などはそこまで深く理解しなくても大丈夫ですが、ポイントは書類等の提出先です。
司法書士は「裁判所」「検察庁」「法務局」に対して提出する書類の作成をすることができます。
書類はさまざまな種類がありますが、その提出先によって業務の範囲が定められているということです。
行政書士との違い
司法書士と1番間違われやすい資格No.1の行政書士との違いについて解説します。
名前こそ似ていますがその本質は全く異なる資格です。
行政書士の独占業務とどう違うのか?
行政書士の独占業務は以下のとおりです。
- 官公署に提出する書類
- 権利義務に関する 書類
- 事実証明に関する書類
司法書士の独占業務のところでも少し触れましたが、書類の提出先がポイントです。
行政書士は「官公署」に提出する書面の作成代理が主な業となります。
官公署とは、分かりやすくいうと市区町村役場のような所です。
みなさんもイメージしやすいと思いますが、例えば市区町村役場に提出する書類と法務局に提出書類だったら、どちらの方が取扱い件数が多いと思いますか?
答えはもちろん市区町村役場です。
つまり、司法書士より行政書士の方が作成代理できる書類の数が多いということです。
これを聞くと
行政書士の方が上じゃね?
というツッコミがよく入ります。
資格に上も下もないですが、責任の大きさで言えば間違いなく司法書士の方が大きいと言えます。
なぜなら司法書士は権利の変動を伴う書類作成をするからです。
これはどういうことかというと、1番分かりやすいのは登記だと思います。
登記は例えば売買による所有権移転を想像してみてください。
所有権移転登記は権利者と義務者による共同申請でなされます。
おわかりのように所有権という権利がまさに移転する瞬間です。
法律において権利の変動(物権変動)が起きる時は、誰かの権利が失われる時でもあるので、重大な責任があります。
このことは、登記の仕組みも分かるように、添付情報に権利証や印鑑証明書が要求され、原則的に権利者(権利を得る者)と義務者(権利を失う者)の共同申請でなければなりません。
そしてこの登記申請を代理する司法書士が存在し、重要な責任を担っています。
行政書士にできて司法書士にできないこと
これは基本的に独占業務がそのまま行政書士にできて司法書士にできないことであると言えます。
しかし、全ての書類が司法書士が作成できないわけではなく、登記申請にしようするような書類、例えば売買契約書であったり、遺産分割協議書、会社の記事録、定款などは司法書士でも作成できるます。
弁護士との違い
弁護士は「裁判」のイメージが強いですが、司法書士も簡易裁判所の代理権が一部付与されています。
実際司法書士の独占業務とどのような違いがあるのでしょうか?
司法書士の独占業務と弁護士
司法書士の独占業務を前述しましたが、司法書士以外にもそれらの独占業務を行うことができる資格があり、それこそが弁護士です。
というのも弁護士に業務の制限はなく、いわばトランプで言うところのジョーカーと同じです。
司法書士に限らず、行政書士や税理士についても同じです。
ただし、宅建業は宅建の資格が必要になるのはちょっとした豆知識です。
司法書士にできて弁護士にできないこと
司法書士にできて弁護士にできない業務はありません。
司法書士の立場からすると何とも悲しいですが、じゃあ弁護士が実際に登記をやるかというとやや疑問の残る点です。
「できる」ことと実際に「やる」ことは別だからです。
弁護士は実際登記手続きについては理解していないと思います。
弁護士になるための司法試験の科目にも不動産登記法や商業登記法はなく、弁護士になった後に登記について学ぶかというとそんなことはしないと思います。
また、世間一般的にも先人の功績により「登記=司法書士」のイメージが定着しており、一般市民が登記をわざわざ弁護士に依頼するのは現実的ではないでしょう。
これは他資格にも言えますが、まさに「餅は餅屋」と言う言葉があるように、それぞれの資格の核になる部分は各資格が専門であるので、業務範囲が重なってもうまく棲み分けがなされています。
とは言え、司法書士の立場からするとそれに甘んじる事なく、司法書士の専門性を高めていかなければなりません。
司法書士は仕事がない?
司法書士のメインは何度もお伝えしているとおり登記ですが、その中でも不動産売買の多少によって登記件数も影響を受けます。
つまり司法書士の仕事も景気に影響されると言うことです。
私の補助者時代の先生から伝え聞いた話なのですが、バブル期には朝から事務所の前に依頼人の列ができていて司法書士が来るのを待っていたくらい仕事があったそうです。
何とも羨ましい話ですが、当然今ではそんなことはなく、数字の上でも登記件数が減少しているのは明らかです。
しかしそれをもって司法書士の仕事がないと言うことはできません。
司法書士も近年では登記以外にも以下のような業務を扱う人が増えてきました。
- 成年後見人
- 債務整理
- 民事信託
- 企業法務
- 財産管理人
このように司法書士の業務も年々広がりを見せており、より司法書士の専門性を活かした分野での活躍が期待されています。
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まとめ
今回は司法書士の独占業務について解説するとともに、行政書士と弁護士との比較も合わせてご紹介しました。
司法書士は登記のイメージが強いので実際にどんな規定に基づいて何ができるのかはあまり知られていませんでした。
なかなか普段の生活では司法書士に会う機会は少ないかもしれませんが、専門的な知識で日本の経済を裏から支えており、その役目は大きくこれからも更なる飛躍する資格であると言えます。
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